北ア常念山脈(長野) 蝶ヶ岳(2677m) 2024年7月20日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 3:03 三股駐車場−−3:15 林道終点−−3:25 吊橋−−3:33 力水−−3:40 ゴジラの木−−4:25 まめうち平−−4:58 蝶沢−−6:03 大滝山分岐(雨具着用) 6:07−−6:18 蝶ヶ岳−−7:01 蝶沢−−7:24 まめうち平−−7:56 ゴジラの木−−8:00 力水−−8:05 吊橋−−8:13 林道終点(水浴び) 8:18−−8:27 三股駐車場

場所長野県安曇野市
年月日2024年7月20日 日帰り
天候曇後雨 稜線は暴風雨
山行種類一般登山
交通手段マイカー
駐車場三股の駐車場(第一駐車場)を利用。夏山シーズンの週末にはすぐに満車になってしまい、10分ほど歩く第二駐車場を利用する
登山道の有無あり
籔の有無無し
危険個所の有無無し
山頂の展望晴れれば大展望
GPSトラックログ
(GPX形式)
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コメント日本海の梅雨前線の影響が出て悪天予報の中を登頂。結果的に雨に降られて傘が大活躍した。山頂直下のハイマツ帯より上部は暴風雨で風上に向かって体を斜めにして歩く場面も。本降りの横殴りの雨でゴアを着ていても足首付近の靴下が濡れてしまった。下山したら登山口も本降りの雨になったが、こんな天気でも第一駐車場は満車で第二駐車場も8割くらい埋まっているように見えた


暴風雨の蝶ヶ岳山頂。写真では風も雨粒も写らない


見かけた花と開花状況

花の種類

場所 

開花状況 

ヒヨドリソウ 林道 花盛り
ノリウツギ 林道 花盛り
クガイソウ 林道 花盛り
キツリフネ 林道終点〜力水 花盛り
ガクアジサイ 林道終点〜力水 花盛り
ツルリンドウ 力水〜まめうち平 咲き始め
アリドオシラン 力水〜まめうち平 咲き始め〜花盛り
ズダヤクシュ 力水〜ハイマツ帯直下 花盛り〜終わり 
カニコウモリ まめうち平〜大滝山分岐 咲き始め
ゴゼンタチバナ まめうち平〜ハイマツ帯 花盛り〜終わり
オサバグサ 蝶沢〜シラビソ樹林帯 ほぼ終わり
ヤグルマソウ まめうち平〜シラビソ樹林帯 花盛り
ミヤマアキノキリンソウ 蝶沢〜シラビソ樹林帯 咲き始め
ミヤマキンポウゲ 最終ベンチ付近 花盛り
オオサクラソウ 最終ベンチ付近 ほぼ終わり
マイヅルソウ 最終ベンチ付近〜ハイマツ帯直下 花盛り〜終わり
カラマツソウ シラビソ樹林帯〜お花畑 咲き始め〜花盛り
モミジカラマツ シラビソ樹林帯〜お花畑 咲き始め〜花盛り
エゾシオガマ 標高2550m付近 咲き始め
バイカオウレン 標高2550m付近 花盛り
ツマトリソウ 標高2550m付近 花盛り
オオヒョウタンボク 標高2600m付近 終わりに近い
ウサギギク 標高2600m付近 1株のみだが花盛り
ハクサンフウロ 標高2600m付近 咲き始め
コバイケイソウ お花畑 花盛り
コイワカガミ お花畑 花盛り
アオノツガザクラ お花畑 花盛り
シナノキンバイ お花畑 終わりに近い
ヨツバシオガマ お花畑 咲き始め
ヒメクワガタ お花畑 咲き始め
キヌガサソウ ハイマツ帯直下 ほぼ終わり
コケモモ ハイマツ帯 花盛り
ハクサンシャクナゲ ハイマツ帯 花盛り
クルマユリ テント場 1株のみだが花盛り
オトギリソウ テント場 花盛り
イワツメクサ 稜線 花盛り
ミヤマキンバイ 稜線 ほぼ終わり
この他にセリ科、ユキノシタ科の花が咲いていたが、私の知識では種類が判別不能でここに記載していない


三股第一駐車場。微かに雨が落ちているが濡れるほどではない 林道終点の登山指導所(無人)
三股分岐。今回は直進して蝶ヶ岳へ 本沢の吊橋
ゴジラの木 まめうち平(1916m峰)
午前4時40分にライト不要な明るさに 日の出。水平線付近のみ雲の隙間があった
蝶沢。十分な水量があった 蝶沢から見た常念岳。この頃が天気が最も良かった
遠い東の空は晴れている 午前5時半前に雨が降り出して傘を取り出す
標高2450m付近。ガスに突入 ハクサンコザクラではなくオオサクラソウ。両者は葉が異なる
ズダヤクシュ マイヅルソウ。山頂直下でも見られた
モミジカラマツ ミヤマキンポウゲ
エゾシオガマ バイカオウレン
ツマトリソウ オオヒョウタンボク
ウサギギク 大滝山分岐で強風に備えて傘→ゴアに変更
お花畑。今年は花が少ないような お花畑のコバイケイソウ
お花畑のコイワカガミとアオノツガザクラ お花畑のヨツバシオガマ
お花畑のシナノキンバイ ヒメクワガタ
キヌガサソウ ハイマツの影のゴゼンタチバナ
ここから先は暴風雨 ハクサンシャクナゲ
テント場のクルマユリ テント場のオトギリソウ
蝶ヶ岳山頂。暴風雨で写真撮影にも苦労 山頂のミヤマキンバイ
テント場。この他に1張あったが強風と雨で大変だろう コケモモ
ハクサンフウロ 僅かに咲き残ったオサバグサ
ヤグルマソウ ミヤマアキノキリンソウ
蝶沢 カニコウモリは咲き始め
帰りのまめうち平は大賑わい(雨は降っていない) マイヅルソウの種
ツルリンドウ アリドオシラン。非常に小さくて見落としやすい
ゴジラの木 力水(最終水場)
ガクアジサイ キツリフネ
林道終点。本降りの雨で雨宿りする登山者 林道上を流れていた沢は暗渠を流れるよう改良されていた
補修された林道 クガイソウ
ノリウツギ。オオカメノキの花に似ているが葉が異なる ヒヨドリソウ
第一駐車場到着。雨が強くなってきた


 今週後半に関東甲信は梅雨明けしたが北陸はまだ。これは日本海に梅雨前線が停滞して北上しきっていないためである。長野の平地(盆地)は梅雨明けの影響が強く出て晴れの天気だが、北アルプスはどちらかと言えば日本海側の気候に近いため、残念ながら悪天予報である。梅雨前線の活動は徐々に低下していく予報なので土曜日より日曜日の方が天気はいいと予想されるが、もう還暦近い身では日曜にアルプスに登ると月曜日の会社がきつくなってしまうため、悪天覚悟で土曜日に出かけることにした。

 行先だが、高山植物の開花のピークを迎えている&前回登山から3週間経過して花の種類が入れ替わっていることを考慮して、本来ならば白馬岳を選択したいところだ。しかし白馬岳は梅雨前線に近くてより悪天が予想され、雨も風も強い予報。特に風は18m/sの予報であり、これに雨が加わっては暴風雨である。それにここは山頂が樹林帯から遠いため、吹き曝しの稜線を長時間歩く必要がある。

 これは許容範囲を越えると判断し、前線から遠い北アでも最南端に近い蝶ヶ岳を選択。今年初であるし、三股から登れば最後の最後まで樹林帯が続いてそれなりに雨を避けることが可能であるし、南西の風は稜線に出るまで地形的にブロックされるのもいい。悪天で展望は無いだろうが、往復でも5時間半くらいと鹿島槍の登りと同じ程度の時間なので、残念さの度合いは小さくて済む。

 ネットで複数の予報を確認したが、蝶ヶ岳付近は日付が変わることから雨が上がってそのまま雨が降らない予報もあれば、夜半から雨が降り始めて翌日もほぼ降り続く予報までばらつきが大きかった。私が一番信用するのは気象庁の「ナウキャスト」(https://www.jma.go.jp/bosai/kaikotan/#lat:35.173808/lon:133.989258/zoom:5/colordepth:deep/elements:rasrf と https://www.jma.go.jp/bosai/wdist/#lat:36.633162/lon:136.186523/zoom:5/colordepth:deep/elements:wm)で、最新の雨雲レーダの観測結果等から計算した予報であるが、これが一番悪かった。雨が上がるのは午前9時〜正午の間くらいで、それより前も後も雨であった。このサイトでは風速と気温の予報はないので別サイト(windy:https://www.windy.com/ja/-%E9%9B%A8%E3%80%81%E9%9B%B7-rain?rain,38.117,137.988,5)で蝶ヶ岳付近の標高3000mの平均風速を確認すると15m/s前後で気温は+10℃。寒さは無いが風は強く、最大瞬間風速ではおそらく30m/sに達するであろう。白馬岳よりはマシであるが、山頂は暴風雨の可能性がある。ただし、蝶ヶ岳では風が強まるのは山頂直下のハイマツ帯に入ってからであり、ここから山頂までは通常なら数分の距離である。

 梅雨明けしたとは言え下界でも大気の状態が不安定であり、週末は悪天予報なので入山者は少ないかと思ったら、三股第一駐車場は8割くらい埋まっていたのには驚いた。これだけの人数が既に山に入っているのを見るのは今シーズン初めてだ。いつものようにゲートに一番近い駐車区画を確保。ここは周囲のスペースの関係で駐車しにくい場所であり、隣に既に駐車されているとバックでアプローチしないと入れない場所だ。予報では夜も雨が降るはずだったが、意外にも三股では全く雨が降らなかった。

 山頂での荒天が予想されるため遅めの出発にして午前4時を想定していたが、夜中に目覚めると雲の隙間から星が見えていて思ったよりも天気が良さそうであり、計画前倒しで午前2時半前に起床。これより前に既に出発していった登山者が数名いたが、おそらく常念岳〜蝶ヶ岳周回組だろう。途中で雨に降られず線で強風に会わなければいいが。それともそれくらいは覚悟の上かな。

 私は午前3時過ぎに出発。山頂到着予定時刻は午前6時半である。このまま天気が持って雨が降らなければいいが、悪天予報が出ているので雨対策をしておく。このコースでは傘が十分に役立つので持っていくが、稜線で風が強まれば使えないのでボロになったゴアも持つ。おそらくお花畑までは出番が無いだろう。傘だけだと足元が濡れる可能性があるのでロングスパッツを持つ。ザックに入れる衣類は全て防水用に袋に入れてから小さなナップザックに突っ込む。今回は雨の中を歩く確率が高く、雨の中で防寒着に着替えることはないので、いつもの日帰り用ザックではなく10リットル程度の小さなナップザックとした。これでも折り畳み傘、ボロゴア、ロングスパッツ、毛糸の帽子と防水手袋、水と食料を入れるのに十分だ。

 外に出て空を見上げるが、いつの間にか星は見えなくなっていた。それどころかごく僅かであるが雨粒が落ちている。おそらく稜線に近付くにつれて天候は徐々に悪化してくる可能性が高く、それこそ本当に先行きに暗雲が立ち込めた状態だ。予報では午前6時〜午前9時の間が一番雨が降り易そうであったので、今よりもっと後の時間が天気が悪いかもしれない。気温も湿度も高くて半袖半ズボンでも全く寒さを感じない状態であった。谷底の三股では普通は完全無風だが今回は僅かながら風を感じ、稜線の風の強さがうかがわれた。

 林道はいつの間にか路面が整備され、2箇所ほど路面上を流れていた沢は暗渠に変わって歩きやすくなっていた。林道終点の車は今回は1台のみ。通常より少ないのはちょっと気になる。ここで先行者の光が見えたが三股から常念岳方面へ上がったようだ。私の方は今年初で直進して蝶ヶ岳方面に進む。

 本沢の吊橋を渡って最終水場の力水で200ccほど給水。まだ梅雨明け直後で蝶沢で水を得られる可能性があるが念のためここで給水しておく。ここから先で傾斜がきつくなり発熱量が多くなって扇を取り出して扇ぎながら登っていく。木の階段と梯子を登れば久々に目にするゴジラの木。ここで一度傾斜が緩くなり、まめうち平から北に落ちる尾根へと上がっていく。

 途中で樹林が少しだけ開けて常念岳が見える個所があるが、まだ真っ暗な時間帯だがシルエットで平らな稜線が確認できた。おそらく前常念岳から山頂にかけての付近であり、常念岳山頂はどうか分からないが、それより少し標高が落ちた個所には雲はかかっていないようだ。ならば蝶ヶ岳もまだ雲の下だろう。ここでは樹林が開けてほんの僅かながら雨粒が落ちてきているのが確認できたが、樹林帯に入れば全く分からない程度の降り方であった。この程度では雨とは呼ばないかな。

 傾斜がきつくなってまめうち平へと上がっていく。ここはイワカガミ、ゴゼンタチバナ、マイヅルソウが群生するが、季節が進んでいずれの花ももう終わっていた。マイヅルソウは茶色く丸い種を付けていた。この登りでは少し風を感じ、やはり稜線は相当な強風と思われた。

 まめうち平は地形図上の1916m峰を指していると思われ、昨年まではそこに標識が出ていたが、なぜか今年はその少し手前に標識がかかっていた。今後はこのままの状態なのだろうか?

 まめうち平を通過すると僅かに下って水平区間に入る。ここから先はオサバグサとカニコウモリの群生地に入るが、さすがにオサバグサはもう見られずカニコウモリが咲き始めていた。それでもさらに進んで蝶沢を越えて標高2300m付近に達すると、僅かながら咲き残ったオサバグサを目にすることができた。私が登る北アの山でオサバグサが見られるのはここだけであり、できれば毎年その花を見たいものである。

 今の時期の日の出は午前4時40分前後なので、樹林が開けた場所ならその30分くらい前にはライトが不要な明るさになるが、今日は空は曇ってしかも樹林が続くことでライトが不要な明るさになったのは日の出の時刻近くだった。日の出を迎えたのは樹林帯の中であったが、曇って太陽は見えないと考えていたが立ち木が朝日に赤く染まった。どうやら東の水平線付近のみ雲が切れていたようだ。さらに標高を上げて東の空が見える場所からは、水平線付近のみ雲が無くて空が見えていた。

 蝶沢が近付くと水が流れる音が聞こえるようになり、現場に到着すると水を補給するのに十分な水量が流れていた。当然ながら雪は完全に消えていた。ここで再び常念岳が姿を現すが、雲がかかっているのは山頂部だけであった。この天気だったら常念岳に登った方が良かったかなぁとも思ったが、ここからでは山頂の風の強さまでは分からない。

 ここまでは予報より天気が良かったし、常念岳がほとんど雲の下で雨粒による霞みも見えなかったので、このまま雨は降らないのかと安心して歩いていたが、標高2300m付近で突如として大粒の雨が落ちてきて急激に雨脚が強まった。こんな時こそ傘が便利で、小さなナップザックから素早く取り出して展開する。まだ樹林帯でほとんど風が無いので傘でも雨対策は十分で、ロングスパッツを付けなくても足元が濡れることななかった。傘は風に弱いのと片手がふさがるのが欠点だが、蒸れることがないのが最大の利点だ。

 雨は降ったり止んだりを繰り返すが、徐々に止んできているように感じた。ただ、まだ樹林帯の中なので正確な雨の強さは分からない。高度が上がって樹林が薄くなると常念岳に続く稜線が見えるようになるが、既に雲がかかって稜線は見えなくなり、斜面は白く霞がかかって雨が落ちているのが分かった。先ほどまでの天気とは大違いだ。

 標高が上がると僅かに咲き残ったオサバグサが登場。まだ写真撮影には明るさ不足なので撮影は下山時に。やがてイワカガミやミヤマキンポウゲも見られるようになる。このルートではミヤマキンポウゲがあるのは登山道が北斜面を上がる区間で、何故か山頂付近では全く見られない。いや、山頂東側のお花畑にはあったかもしれないが、数は多くなかったはず。咲き残ったオオサクラソウは1,2株のみ。そう言えば登山口の案内看板にはハクサンコザクラと書かれていたがあれは間違いである。花の見た目はハクサンコザクラもオオサクラソウも同じであるが、葉っぱが異なる。オオサクラソウは円形に近い幅広な葉であるが、ハクサンコザクラはヘラ状で細長い。

 高度を上げて木の高さが低くなってくると徐々に風が強まってくるが、まだ何とか傘で我慢できる範囲である。稜線もこの程度ならいいが、おそらくかなりの強風だろう。でも雨の強さが今くらいだったらさほど問題ないだろう。雨は傘が無くてもそれほど濡れないくらいの強さであった。

 標高2450m付近でガスに突入した。最終ベンチを過ぎると下ってくる登山者とすれ違うようになる。ほとんどの人は雨具を着用しているが、中には着用していない人も。まあ、この程度の雨ならそれほど濡れないで済むだろうし、下山だったら登山口の車に到着すれば着替えもあるだろう。

 大滝山分岐に到着。樹林はここまででこの先は強風が予想されるため、ここで傘からゴアに切り替える。足元はスパッツで固めるか悩んだが、今の雨の強さならゴアのズボンの裾から登山靴に流れるほどではないので装着しないことに決定。この天気ではどうせ山頂では写真撮影だけでとんぼ返りなので、短時間しかいないだろう。今回は小さなナップザックなので背負ったままゴアを着用可能。ゴアを着てしまえばザックの中身は空に近くなる。

 傘は邪魔なのでハイマツの陰にデポ。お花畑ではコバイケイソウが咲いていたが、ここでは初めて見たような。ここではハクサンフウロの記憶が強いが全く見られず、コイワカガミとアオノツガザクラ、カラマツソウが中心であった。その中に僅かにシナノキンバイが咲いていた。お花畑から僅かに上がった登山道脇にはヒメクワガタが咲いていた。そして背が高いハイマツが登場してその中の溝の様な登山道脇には目立たないがゴゼンタチバナにマイヅルソウ。曲がり角には毎年咲いているキヌガサソウが健在であった。

 木の階段を上がって谷間を抜けて低いハイマツ帯に入ると予想通りに強風が吹きつけるが、予想外に雨が本降り状態で横殴り。ゴアのズボンの裾とハイカットの靴の間の隙間の靴下が容赦なく濡れてしまう。樹林帯と稜線でこれほど雨の量に差があるのは初めてだ。風の強さのピークでは登山道から押し出されそうになるくらいで、横風を受けると風上側に体を倒しながら歩くような状態であった。おそらく平均で20m/s、瞬間的には30m/sを越えているだろう。これでは稜線を縦走するのは不可能とまでは言わないが、かなり大変だろう。常念岳〜蝶ヶ岳周回に向かった連中は常念岳で断念しただろうか。

 デジカメが入ったウェストポーチができるだけ濡れないよう、体の風下側に回して進んでいく。残念ながらウェストポーチは体から出っ張っているのでゴアではカバーしきれない。驚いたことにこの雨に強風でもテントが4張あった。まあ、昨夜はこれほど天気が悪化していなかったのかもしれないが。テント場は南から西寄りの風が稜線でブロックされる場所にあるが、それでも一人では設営/撤収が困難なほどの強風であった。

 テント場の西側はお花畑になる場所だが今回は花が少なかった。おそらくピークを過ぎてしまったのだろう。暴風雨だったのでじっくりと花を探すことはできなかったが、咲いていたのはクルマユリが1株とオトギリソウだった。

 テント場から稜線に出ると再び風が強まって爆風状態。無人の山頂に向かって緩やかに登っていく。とても花を探しながら歩ける状況ではなく、ぱっと見だけで分かったのはイワツメクサとミヤマキンバイだけで、ミヤマキンバイはもう終了間近だった。

 暴風雨の蝶ヶ岳山頂に到着。風上側に立って何とか山頂での写真撮影だけ行って即下山開始。こんな状態では休憩どころではないし、出発から3時間強しか経過しておらず疲れは感じなかったので、このまま歩き続けても問題なし。帰りにどうにかコケモモ等の花の写真撮影を行ってから安全地帯のお花畑に。ここではガスはかかったままだが山頂の暴風雨が嘘のように穏やかだ。登りの時よりは雨は弱まっていた。

 防水性が劣化したゴアで衣類の一部が濡れてしまったこともあり、体が温まるまではゴアを着たまま下ることにする。往路でデポした傘の回収は忘れない。残念ながらおそらく下りでも傘が活躍するだろう。

 下りで初めて出会った人は標高2500m付近だろうか。その後もポツリポツリと登りの人とすれ違う。ここは樹林帯で風雨がまだ弱いからいいが、ハイマツ帯に出るとびっくりするだろう。明らかに幕営と思える大きさの装備の人もいたが、このままの天候が続くと幕営は厳しいかな。

 高度を落としていくと徐々に風も弱まってきて、体が温まった適当な場所でゴアの上下を脱ぐ。雨は往路よりも弱いので傘は不要で手に持ったまま歩く。木の階段よりも木の根や岩の方が滑りやすいので、特に下りでは要注意だ。

 蝶沢を通過してまめうち平へと下っていく区間ではすれ違う人がぐっと多くなった。まめうち平では20人近くが休憩していたと思う。この時は雨は降っていなかったが、下り傾斜が緩やかになって横移動しているときに不意に雨が降り出して急いで傘を出した差した。稜線から離れるほど天気が回復すると思っていたが、そんなことはなかったようだ。予報ではこの時間帯は松本盆地内まで雨雲が達する予報だったが、その通りになってしまった。結局、そのまま三股駐車場まで雨が止むことはなく、時間経過とともに雨脚が強くなっていった。

 まめうち平から北に落ちる尾根を離れて東へと下っていく区間では、非常に小さな白い花を発見。見たことがあるような気もするが名前は全く浮かばないので帰宅後にグーグルの画像検索にかけるとランの一種であるアリドオシランだと判明。念のために複数のサイトでアリドオシランの花や葉の形状、生えている環境を確認したが間違いなかった。相変わらず今の画像検索の精度の高さには驚かされる。以前は何科か分からない花の種類を特定するのは非常に手間も時間もかかっていたのだが。地面を這う蔓に咲く花はツルリンドウ。これは過去にここで見たことがある花だ。

 本沢の吊橋では雨はそれほど強くなかったこともあり、吊橋上で写真や動画撮影をしている2人組に遭遇。吊橋の上で人に会うのは初めてであり、一人しか渡れない幅ですれ違い不可なので、2人が撮影を終えるまで待った。林道終点に到着する頃には本降りになっていて、無人の登山指導所の軒先では雨宿りする登山者の姿があった。私はここの水場で濡れタオルで軽く汗を洗い流した。ここまで来れば車が近いので濡れても問題ない。防水性能が劣化したボロゴアで濡れた部分は着干しでほぼ乾いていたが、盛大に濡れた靴下だけはいかんともしがたい。でも気温が高いので冷たくは感じなかった。

 本降りの雨の中を林道を歩いて三股第一駐車場へ到着。こんな天気でもこれから出発するパーティーは結構いた。天気予報では明日の方が天気はいいようなので、小屋で1泊すれば雨は止んでいるかもしれない。帰宅後にネットで雨雲レーダーを確認したが、午後は雨雲はかかっていないようだった。

 着替えを済ませて車を走らせると駐車場は満車であった。10分ほど歩いた先にある第二駐車場は林道からぱっと見では8割程度埋まっているようで、天候の割には入山者が多かった。一応、長野が梅雨明けした影響が大きいだろう。これで天気が良かったら林道路側まで駐車する車でいっぱいになるだろう。それは本格的に梅雨が明ける来週以降かな。でもその時には森林限界を超える高山植物の花はかなり減ってしまいそう。

 

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